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【活動報告】ワークショップ「思考し表現する学生を育てる」(2009年12月12日(土)開催)

「思考し表現する学生を育てる
-書くことをどう指導し、評価するか?Ⅱ-」

 「思考し表現する学生を育てる」ことは、今日の大学教育において、いっそうの重要性をおびつつあります。ところが教員は、思考や表現に関する指導や評価について、いまだ経験則以上のものをあまり持ちえていないのが現状です。
この問題について昨年度シンポジウムを開催したところ、「もう少し議論を深めたい」、「時間をもっとゆったりとってほしい」との意見が多数ありました。そこで今年度は同じテーマでワークショップを開催することにしました。ワークショップの開催概要はこちらをご覧ください。
ワークショップ当日は51名の参加があり、会員校からは34名にご参加いただき、さらに非会員校からは17名にご参加いただくことができました。中には、東京や福岡など遠方からご参加くださった方もいらっしゃいました。昨今の大学教育における、本テーマに対する関心の深さがうかがわれます。
第Ⅰ部では、安岡高志氏(立命館大学、本WG)による司会のもと、小講演と事例紹介がおこなわれました。はじめに青山学院大学の鈴木宏昭氏より、「書くための問いを生み出すことを支援する」と題して小講演をいただき、EMUによるマーキング(下線引き)とタグづけ(感情タグ)を活用した実践やBlogを利用した協調学習の実践が報告され、問題設定およびそのプロセスを支援することの重要性と、協調学習がそれらを促進する可能性について示唆されました。続く事例紹介では、関西大学の三浦真琴氏より、「添削から創作へ-関西大学全学共通科目『文章力をみがく』-」と題して事例紹介をいただき、ご自身の授業実践の報告を通じて、"What to write"や"For whom to write"、"Why to write"の重要性と、学生による「創作活動」を通じたライティング教育の可能性が提示されました。
河﨑美保氏、石川裕之氏(京都大学、本WG)によって昨年度のシンポジウムのまとめとグループワークの進め方についての説明がなされた後、第Ⅱ部に入りました。第Ⅱ部では、参加者が3つの教室、あわせて9つのグループに分かれてグループワークがおこなわれ、参加者同士による白熱したディスカッションがおこなわれました。
第Ⅲ部では、松下佳代氏(京都大学、本WG)による司会のもと、グループワークで出た論点等についての各教室代表による発表、参加者全員による全体討論がおこなわれました(全体討論の際に各教室より示された論点は以下の画像をご覧ください。クリックすると拡大版が表示されます)。

Room_A Room_B Room_C

 全体討論では主に、「what(何を書くか;内容)とhow(どう書くか;形式)の関係」、「書くことと考えること、読むことの関係」について議論がなされました。
「whatとhowの関係」に関しては、「両者は単純に二分できるものではなく、車の車輪のように共に必要である(青山学院大学 鈴木宏昭氏)」との認識を踏まえつつ、「指導にあたってはどちらに重きをおくかという選択にせまられる」、「学生のタイプによって、howを教わることでwhatの深まりへとつながる場合もあればそうでない場合もあるのではないか」、「求められるwhatは大学によって異なってくるのではないか」といった意見が交わされました。さらに、どういったwhatやhowが望ましいかを判断するには、「誰に対して書くのか」(一般的な他者か学問の蓄積としての他者か等)もまた問う必要があるとの認識が得られました。 また「書くことと考えること、読むことの関係」については、鈴木宏昭氏のご講演にあったように、「書くこと」の前に感情を喚起するようなものを「読む」ことが「考えるに値する問題を発見すること」、「書くこと」へとつながっていくなど、一般的にいう「考える」行為と「書くために考える」、「書きながら考える」といった行為とを分けてとらえることで、「思考・表現」指導のあり方についての議論をよりクリアに展開できるのではないかとの展望が得られました。
その後、本ワークショップの締めくくりとして、桜美林大学の井下千以子氏より、「ライティング教育と Curriculum Development-学びの先を見通す力-」と題して今回のワークショップに対する総括コメントをいただきました。今回のワークショップでは、ライティング教育において、①いま、どんなことが問題となっているのか、②どんな授業が展開されているのか、③学生の反応、各大学の現状の3点が明らかになりましたが、それと同時に、カリキュラム全体に渡って、初年次だけでなく、学習技術だけでなく、専門教育につなげ、自己の発達も視野に入れた総合的な学士課程カリキュラムとしてライティング教育を考えていくこと、すなわち「学びの先を見通す力」をいかに涵養していくかという課題が提起されました。

アンケート結果

 「ワークショップへの参加満足度」、「プログラムの前半(小講演・事例紹介)の有意義度」、「プログラムの後半(グループワーク・全体討論・総括コメント)の有意義度」を5件法(1:まったく満足していない/有意義ではなかった~5:非常に満足している/有意義だった)によりたずねたところ、それぞれの評定平均は4.3、4.4、4.2でした(回答者39名)。全体的に参加者の満足度は高く、各プログラムの内容も有意義であったとの評価が得られました。
ワークショップに満足した理由をたずねたところ、主に「具体的な事例に基づく各大学の実践状況を知るとともに、理論的な枠組みを知ることができた」ことが挙げられました。また、プログラムについて有意義であると感じた理由としては、「小講演と事例紹介で紹介されているアプローチが対照的でバランスが取れていた」、「グループワークではライティングに関する多様な意見を知ることができた」という回答が得られました。さらに、ワークショップ参加による最大の収穫についてもたずねたところ、「『大講演』形式でないFDの理想的な雰囲気にふれることができたこと」、「グループワークで各自の資料を持参することで、より具体的な話をすることができたこと」、「自分自身の思考のクセ―当たり前だと思っていたことが実はそうではない―という気づきを得たこと」など、本ワーキンググループの活動趣旨に適った評価が得られました。最後に、「今後に向けて改善した方がいいと思われる点」をたずねたところ、グループワークに関する意見が多く寄せられました。特に、グループ討論の時間が短かったことや、大学間の格差があり、「思考し表現する」のうち「思考」にまで議論が発展しない場面があったことなどから、「時間をより長くとり、主題・問題点を限定する」といった提案が出されました。
来年度も同じテーマでワークショップを継続するかどうかについては、以上のアンケート結果をふまえて、ワーキンググループ内で検討したいと考えています。

ワークショップの様子

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【主催】関西地区FD連絡協議会FD連携企画WG


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