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【活動報告】「ワークショップ:思考し表現する学生を育てるⅣ―ライティング指導の方法―」(2011年12月17日(土)開催)

 FD連携企画ワーキンググループでは、2011年12月17日(土)に立命館大学衣笠キャンパスにおいて、第8回関西地区FD連絡協議会主催イベント「ワークショップ:思考し表現する学生を育てるⅣ―ライティング指導の方法―」を開催した。本活動は、昨年度より好評を博している形式―講演とワークショップ―で行われた。以下に、このワークショップのプログラム、当日の状況、アンケート結果を報告する。

◇プログラム

13:00〜13:10 開会あいさつ
田中 毎実(関西地区FD連絡協議会代表幹事校代表・
京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
13:10〜14:10 講演
「『モジュール』に基づいたレポート、小論文の作成技法について」
小田中 章浩(大阪市立大学文学研究科教授)
14:10〜14:40 事例紹介
「立命館大学における初年次日本語リテラシー科目の取組」
薄井 道正(立命館守山中学校・高等学校教諭/
立命館大学非常勤講師)
15:00〜16:30 グループワーク
16:40〜18:00  全体討論 

◇当日の様子

 参加者は会員校から40名、非会員校から9名の計49名であった。例年のことであるが、今年も東京や宮崎など遠方からの参加者が少なからずあり、本テーマへの関心の深さがうかがわれた。サブタイトルを「ライティング指導の方法」とした今年は、日頃指導に関わる参加者たちが実践において抱える問題意識を持ち寄り熱心に参加する姿が見られた。

◇第Ⅰ部
①講演(小田中章浩氏)
第Ⅰ部では、田中俊也氏(関西大学、本WG)による司会のもと、講演と事例紹介が行われた。大阪市立大学の小田中章浩教授による講演では、小田中氏がフランス政府給費生として留学をした際に学んだフランス流文章作成法であるdissertationに必要な技法を日本語の文脈に置き換えつつ開発したという文章作成方法について、前任校である岡山理科大学で担当していた「文章表現法」、および現任校での初年次セミナーや卒論指導における指導実践が紹介された。これらの授業では論理的文章を作成するために必要な考え方を学生が学ぶことが目的とされている。小田中氏は論理的であることとそれを文章化することの間にある問題を思考パターンの問題であるととらえ、文章の設計図を考えそれを文章化するプロセスを教えている。文章構造を学ぶことで、学生はただのエッセイではなく学術的なアプローチを持った小論文を書くことができるようになる。具体的には、学生は例として提示される文章の構造を分析し(モジュール化)、要約の練習を行う。この過程では文章構造において重要な接続詞についての理解と用法が強調され、論理的文章の作成技術が習得されていく。こうした作業を前提として、小論文作成に取り組む。そこでは対比的な視点を導入することによって文章に論理的一貫性と明確さを持たせることを意識した指導がなされる。また、こうしたモジュール化の手法は、アカデミック・ライティングだけでなく、学生が今後直面するであろう社会生活の諸相においても応用可能であることが、おわびの手紙などを例にとって述べられた。例としてとりあげられている文章も厳選されており、論理的文章とは何かということが自然と理解されるような流れで教えられるこの指導法は、非常に興味深いものであった。

②事例紹介(薄井道正氏)
続いて、立命館守山中学校・高等学校教諭であり、2年前から立命館大学でも非常勤講師として教鞭をとっておられる薄井道正氏によって、立命館大学における特殊講義「学びのとびら・入門」(初年次日本語リテラシー科目)における取り組みが紹介された。「学びのとびら・入門」は、学生が読むこと・書くこと・考えることについて理解し、トータルとしての学ぶための技法を学ぶ講義である。高校までの学びとは異なる、大学における学び、すなわち新たな知をもたらすことのできるような(研究に近い)学びの仕方について、(1)学びのための基本スキル(ノートテイキングや情報収集の方法など)、(2)ロジカル・ライティングとパラグラフ・ライティング、(3)批判的思考とデータに基づいた思考という3つの観点から説明があった。(2)のライティングに関するスキルについては、伝わる文章を書く際には、伝えるべき相手がいて、それが誰なのか、そしてその相手が理解しやすい文章を書くことの意識付けが強調され、(3)については、ひとつの情報に依拠することなく、その情報の裏付け(論拠)はどこにあるのかを批判的に考えることの重要性について詳細な説明があった。具体例を豊富に織り交ぜながら紹介された氏の事例紹介は、文章がどのような要素・表現を持てば相手に伝わりやすいものになるのかを分かりやすく報告したものであり、参加者にとって大変有意義であった。
質疑応答では、2人の講演者に活発な質問が投げかけられた。

◇第Ⅱ部:テーマ別グループワーク
田川(京都大学、本WG)によってグループワークの進め方についての説明がなされた後、第Ⅱ部に入った。第Ⅱ部では、今年度初の試みとして、テーマ別にグループワークが行われた。テーマは、①論文指導、②作文法、③コピペ対策、の三つが設けられ、グループワークに先立ちそれぞれのテーマについて講師よりミニレクチャーが行われた(①論文指導「十字モデルで協同的に論文を考える」牧野由香里 関西大学総合情報学部教授、②作文法「科学的作文法入門」倉茂好匡 滋賀県立大学環境科学部教授、③コピペ対策「阪南大学コピペ検索システム」花川典子 阪南大学経営情報学部教授)。参加者は希望するテーマごとに3つの教室に計10グループに分かれ、グループワークを行った。グループワークでは、持参した資料にもとづいて各自が自身の実践を紹介し、それをグループで共有し議論した。また、議論した結果を90cm×120cmのポータブルなホワイトボードにまとめてもらった。興味のあるテーマ別にグループ分けをしたことにより、グループ内でよりスムーズかつ活発な議論ができたようであった。

◇第Ⅲ部:全体討論
第Ⅲ部の全体討論においては、安岡高志氏(立命館大学、本WG)による司会のもと、各グループで議論した論点がホワイトボードを用いながら報告され、これをふまえ参加者全員による全体討論がおこなわれた。10グループから出された論点は、全体のテーマである「ライティングの指導方法」とミニレクチャーのテーマとがあわさった中で出てきたものであった。主なものとしては、いかに論理的思考と書くことをつなげて指導するか、何を教えるべきか、専門が多岐にわたる学生にどのように指導をするのか、初年次教育における日本語科目と専攻科目とをどうつなげていくのか、評価をどう行うのか、コピペ問題を根本的に解決するにはどうしたよいのか、などであった。
討論では、とりわけ一回生の指導について、専門が異なる共通教育で行う場合に学部学科共通で行うことができるるのか、という点が取り上げられた。何を書くことを教えるのか―「WhatとHow」という問い―は例年必ず話題に上がる論点であり、多くの教員が日頃から抱える疑問点である。今年はまた、テーマ別グループワークにあったコピペについても活発な議論がなされた。具体的には、コピペを検出する以前にするべきこととして、学生にどのように倫理観を教えるのかについては、著作権・人権という話の中で他人の権利として教えているという事例が紹介された。また、これらすべての点について、教える側をどう組織するか、また評価基準をどう作成し共有していくか、という点も話題に上がった。
最後に、司会の安岡氏より締めくくりとして議論の整理とコメントが行われた。本日の議論を通して浮かび上がったライティング指導のポイントとして、安岡氏は以下の三点をあげた。すなわち、①どんなトピックを、誰にむけて書くのかが重要であること、②指導方法がどうあるべきかについては、採点・添削を通した教員同士のコミュニケーションが必要であること、③採点・ルーブリックはどのように作成するべきなのかという課題があること、である。これらの論点は、来年度以降のWGの活動に活かしていきたい。

◇事後アンケート結果

 ワークショップ終了後、「ワークショップ全体への参加満足度」「プログラムの有意義度(講演、事例紹介、テーマ別グループワーク、ミニレクチャー①・②・③)」について5件法(1:まったく満足していない/有意義ではなかった〜5:非常に満足している・有意義だった)によりたずねたところ、それぞれの評定平均は4.4、4.3、4.4、4.2、4.3、4.7、4.7だった(回答者は順に44名、45名、45名、43名、17名、16名、7名)。全体的に参加者の満足度は高く、各プログラムの内容も有意義であったとの評価が得られた。
ワークショップに満足した理由をたずねたところ、「他大学の状況がわかったこと」「他の先生の取り組みや工夫を知る事ができたこと」「授業に使える具体的なアイディアを得ることができたこと」「役に立つ今後につながる議論ができたこと」などがあげられた。さらに、ワークショップ参加による最大の収穫についてもたずねたところ、「各大学での具体的な取り組みをもとに議論を深めることができたこと」「情報の共有」「具体的な教授方法のアイディアが得られたこと」「文章指導の具体的なイメージを得られたこと」「多くの事例の収集と今後の本学における開発」など、共有することへの評価が高く、それが今後に役立って行くだろうという記述が多く見られた。
最後に、「今後に向けて改善したほうがいいと思われる点」をたずねたところ、グループワークに関する意見がいくつか寄せられた。とりわけ時間がタイトであったこと、全体の配分の中でもう少しグループワークの時間を増やせないかということ、などタイムスケジュールに関する指摘が多く見られた。また、実践で指導対象としている学生に違いがあることから、例えば留学生への日本語教育、レポート指導、などというようにある程度グループワーク分けを実践例によってできないかという意見もあった。持参する資料について詳細な指示がほしいという意見、あるいは、あらかじめ課題を示しそれに従って実践例を整理してくるのはどうかなど、時間の制限がある中でテーマ別に効果的に使うための提案も見られた。

◇今後の計画

ワークショップで参加者に持参していただいた資料のうち、許可をいただいたものについては、スキャンし、整理・分類した上で、協議会のウェブサイトにアップしている。
4年間にわたる開催をふまえ、来年度も同じテーマでワークショップを継続するかどうかについては、現在、WG内で検討中である。この成果を出版物などで形にしていくこともWGでは検討している。また、事後アンケートでは、複数の参加者から、本WGへの参加希望と関西FDパイロット校への参加希望が寄せられたが、これについても、今後のテーマや活動内容との関係をみながらWGで議論をおこなっているところである。

◇各グループのホワイトボード

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ワークショップの様子

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【主催】関西地区FD連絡協議会FD連携企画WG


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